3 出会い②
「あら?聞こえなかったのかしら?それならもう一度言うわね
この私こそが第77代目魔王シルク・バスキアス・ベルトスよ!」
「はぁ゙ぁぁぁ」
「何よ、急に大声出さないで頂戴びっくりするじゃない」
「えッ、お前が魔王?嘘じゃないよな、そ、そうだ証拠はあるのかよ?」
「お前じゃなくてシルクと呼びなさい!それと証拠なら.....」
そう言って少女はポケットから不思議な黄金に輝く丸い石を取り出した
天動説の火星の動きの軌道をたどるように緑、赤、白が別々に動いていて真ん中には家紋だろうか、不思議な模様が書かれている
この世界のことをあまり知らないコウジでも高級品もはや国宝級だとわかるほどに高そうなものだった
「どう、これで私が魔王ということを信じたかしら」
.....マジか、こいつほんとに魔王だったのか...
あれ?というか今こいつを殺せば平穏な生活手に入るんじゃね?.....
「おーい、なにか返事をしなさいって
人の話聞いてたかしら?
もしかして魔王にあって感激のあまりおしっこ漏らしちゃったとか?
それとも私の溢れる魅力に惚れちゃったかしら?
あれ?急にロープと剣を持ってどうしたの?」
刹那俺は目の前の魔王に飛びかかりロープでぐるぐる巻きにした
「よし!」
「何が『よし!』よ、こっちは何にも良くないんですけど、ていうかなんでいきなり縛ったの?事情を説明してほしいんですけど」
「理由も何も、魔王が暴れているから不運にも俺は追い出されて旅をすることになったんだぞ、そしてその魔王が目の前にいるんだったら捕まえるだろ普通」
「それなら私関係ないじゃない、だって私魔王城追い出されたんだもん!」
「嘘をつくな、さっきお前自分で魔王って言ったじゃん」
「だ〜か〜ら〜、追い出されたの!事情も全部話すから早くこの縄をほどいてよ!」
怪しさ満点だが美少女をイモムシのようにロープでぐるぐる巻きにして、見下ろしているのは物凄く絵面が悪い
しかも涙目でこちらを見てくるあたりもそれに拍車をかけている
「はぁ〜、分かった、縄をほどいてやるかどうかは置いといて、話は聞いてやるよ」
「一番置いといてほしくないところを置いとかれた気がするんですけど、私女の子なんですけど、流石にイモムシみたいに巻かれたまま話をするのは嫌なんですけど
ちょっと!どこ行くの、分かった話すから!縄ほどいて貰う前に話すから」
やばい、こいつ案外面白いぞ
普段自分が哀れな目にあっている分、人が苦しんでいる姿を見るのはすごく楽しい。
あわよくばこのままずっとここに放置して泣き叫んでいる姿を見たい!
という衝動に駆られるがグッと堪えそろそろ泣きそうな魔王(自称)の元へ踵を返す
これ以上とやかく言うと本当においていかれると思ったのか少し急ぎ目に自分がなんで魔王城を追い出されたのか語り始めた
ーーーー3年前私の父、オルド・バスキアス・ベルトスが死んでから私は親の七光りということで魔王になった
幸運なことに私の父は各種族との調和を望んでいて、他の種族も調和を望んでいたから争いの火種もなく平和に収めていたの、でもそんな中にも不満を持つやつがいて、ヴァペットというオルドの右腕だった男が3ヶ月前に反乱を起こし、それに乗じて幹部たちも反乱を起こし始めたの、その後協力者と一緒になんとか逃げたして、なんやかんやあってここまで逃げてきたってわけ
(なるほど、要するにこいつは無能だから反乱されて追い出されたと)
「これで私が問題を起こしている魔王じゃないってわかったかしら」
「よし、じゃあ縄はほどいてやるから強く生きろよ」
「え?ここまで聞いて助けてくれないわけ?普通美女が助けを求めていたら助けないの?」
(どんだけ自己評価高いんだよこいつ......はぁ、まあいいか縄もほどいて話も聞いてやったしさっさと王都に向かおう、ここからだとあと二時間くらいでつくし)
そう思って俺はさよなら、と短い言葉を残して王都へと歩き出した
このときの俺はてっきり他の協力者を求めて何処かへ行ったと思っていた、しかし俺は気づいていなかったのである
こっそりと王都まで付いてきたこの魔王がこれから起こるあらゆる不幸の種となることに