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『教会』は教会
「ああ。なんだかおれのほうが落ち着きなくて、暗い階段をおりるときも腰の銃に手をかけっぱなしだった。 ―― けっきょく教会の地下には、《重病人》を看護するためのベッドが置いてあって、《治療室》だっていう部屋にたくさんの薬草なんかがつまった瓶が置かれてて、その薬草のにおいがすごかったけど、ベッドには誰もいなかったし、ほかの、《軽症用》だっていう上から光がさしこんでる部屋までまわってみたけど、誰もいなかった」
「なんの痕跡もなかったわけか」
それじゃあ、それいじょう捜索できないな、とジャンが腕をくんでバートをふりかえる。
「その『教会』は、先住民族の活動施設ってことになってるのか?」
バートはライアンをみた。
「いえ、《施設》じゃなくて、《教会》ってことで登録されてるはずです。先住民族たちはあそこで結婚式もあげられて、そこでの婚姻証明書は州に登録されるので、こっちの法にふくまれた扱いになりますから」いまは重婚とかはできません、とロビーが説明する。