86/260
かつがれてる
ファイル№13 ― 悩み ―
「 その『悩み』が、『狼男』に薬をもるって役割のこと?」
ウィルのその声音は、どこにもわらいをふくんでいなかった。
逆に、アニーがふきだすようにわらい、男たちをみまわす。
「 なに言ってんのさ? それ、・・・テリーにかつがれてるんだよ」
「 アニー、 ―― テリーは、ダゲッドム族についての、冗談だって言わないよ」
横にすわるロビーが、硬い声で首をふる。
そうだ、とライアンもうなずいた。
「おれもはじめ、なんの冗談かとおもった。だけどテリーは、・・・目を赤くしながら、もう、教会で『狼男』に薬を飲ませたくない、って言った。 七歳になったときにサマンサに連れられて行ったとき、その《儀式》がまっていたって、声をふるわせたよ」
『儀式』?と警備官たちがいやそうに声をあわせた。