最後のひとり
「 アニー、ちょっと、聞いてほしい。 テリーは、たしかに、自分が最後のダゲッドム族だっていうのを誇りにおもっている反面、・・・このまま自分でおわってしまうんじゃないかっていうのを、いま、すごく気にしてる。 なぜなら、彼は、・・・《ダゲッドム族》がいなくなれば、 ―― 教会の『狼男』が、出てくるんじゃないかって、考えているからだ」
「まあ、・・・彼ちょっとまじめすぎるし、ダゲッドム族としての、責任感が強いから」
「それと、母親によるすりこみだね」
ウィルの感想に、女は敵意をこめた目をむけ、あんたいいかげん、と言いかけるが、ライアンが、「おれもそう思う」といきなり賛同し、微妙な間ができた。
「・・・ちょっと、ライアン・・・まさか、・・・いままでずっと、そんな目で?」
「 違うんだ、アニー、最後まできいてくれ。 ―― おれがここに赴任してすぐに、サマンサは食事に招いてくれたし、ここでの暮らしについての知恵もさずけてくれた。彼女の、いわゆる伝承的な医療法は効果があるし、おれも助けられてる。でも、 ―― あの『教会』についての彼女の態度は、決してほめられたものじゃあない。 テリーは、 ・・・七歳からずっと、あの教会に月に一度必ず泊まるように決められていて、彼はずっと、母親にいわれるままに、それをあたりまえのこととして、・・・続けている」