教会には近づくな
眉間をつめたアニーが口をひらくまえにロビーが身をのりだす。
「こどもにする、そういう『おはなし』って、なにかの《教訓》が必ずあるのかと思ってましたけど、それって単なるダゲッドム族たちの《悪口》じゃないですか? それこそ、サマンサたちが伝えてる『お話』とあなたのきいた『おはなし』の、どっちが正しいかなんて、当時そこにいた人たちにしか本当のとこがわからないんですから」
ロビーの指摘に、隣のアニーが讃えるように、そのとおり、と言い添える。
ルイは、そうだねえ、と同意しながらも、でも、と続ける。
「 ―― おれはその庭師の夫婦から、だれかの悪口なんてきいたことないし、このはなしをしてくれたのは、大事なことを伝えるためだったとおもうよ。つまり、 ―― 」
「 その教会には近づくな 」
代わりに言い切ったケンは、いい『おはなし』じゃねえか、とアニーの顔をみた。
「 『狼男』は知識をぬすまれて、人間に教会に閉じ込められてるってはなしだろ?」
だからそれは、といいいかけたアニーに、いままでずっと黙ってきいていたライアンがいきなり立ち上がって、両手をあげた。