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べつの『おはなし』
「 今思えば、彼らはきっとこの大陸の先住民族だったんだろうなぁ。ここに伝わるいろんな『おはなし』をしてくれた中に、もちろん、アペレ山に伝わる《狼男》のはなしもしてくれた。でも、彼がしてくれたおはなしにでてくる《狼男》は、しゃべれるどころか、人間に薬草なんかのことを教えてくれるほどの知性がある《狼男》で、それで、たくさんの人間を助けていたっていうものだった」
ん?と首をまげたザックが、それじゃあさっきのダゲッドム族と同じじゃん、とライアンをみた。
そうなんだよ、とルイが続きをはじめる。
「 おれがきいたお話では、薬草で医者みたいなことをしていたのは『アペレ山に住んでいた狼男』で、その恩恵をうけていたのは、このあたりの先住民族である、ダゲッドム族ってことだった」
「じゃあ、かれらの知識は、狼男に教わったってこと?」
ウィルが身をおこす。
「おれのきいた『おはなし』だとそうなるなぁ」