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狩猟の経験値
ケンとザックは顔をみあわせてわらってしまった。
それにかぶせるように男は言う。
「普段は《よそ者》を誘うことはないが、おまえらはよさそうだ。今回の報酬はいつもよりいい条件で受けているから、ゲームに勝てば、おまえらの取り分も、うわのせになる」
ゲーム?ザックがききかえそうとするのを遮るように、ケンが身をのりだして、「ことわる」とはっきり発音した。
「おれたちの仲間は最強だ」
「たしかにみんな若いな。だがな、―― 狩猟は経験値がものをいう。 若いだけじゃ獲物を追えない」
ビールがはこばれてくるのと入れ違いにケンは黙ったままテーブルをはなれた。ザックもあわててあとを追う。
「むこうで会ったら手を組んでやってもいい。 おまえの『ボス』にもそう伝えておくといい」
ケンは完全に無視していたので、ザックはしかたなく一度ふりかえり、あいまいに笑ってみせた。
男はビール瓶をかかげて二人を見送った。