かわいい子とぼうや
「へえ、その男、いまでもその教会に出入りしてるわけだ?」
じゃまな金髪をはらい、《貴族様》はさらにききかえす。
ありがたいことに、ライアンのかわりにロビーが、そうです、彼はダゲッドム族ですから、とこたえる。
思い立ったようにアニーがウィルの前にたち、「このひと」と、腕をくんで長椅子にすわる男をみおろす。
「 ―― 先住民族に偏見をもってるのか、ここに住んでるあたしたちが嫌いなのかしらないけど、いっしょに山にはいきたくない。 それと、あの若いかわいい子と、にやにやしてるぼうやも、いっしょに山を歩くなんて心配だわ。迷子になっても、あたしは、さがしにいかないからね」
組んだ腕からだした指でさされた、ザックは、ケンのことをみてふきだして笑いながら床にころがり、こちらもわらいをこらえたジャンが、了承しながらあやまった。
「ご、めん、・・・いや、うん、わらいごとじゃねえな、 ―― まあ、ウィルはこの通りだけど、彼が偏見をもってるのはその『狼男』と、『教会』に対してだから、気にしないでくれ」
はあ?とアニーが首をかたむけ、床でケンに関節技をかけられてるザックが、笑いではなく叫び声をあげたとき、まったく笑いもしなかったバートが、いらついたようにルイをよんだ。