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保護法
ライアンが腕をくんですこしこまった顔をする。
「知っての通り、先住民族にだけ適用される『保護法』がある。それの中での『子どもの保護に関して』の決まりは、おれたちの法とちがって、ひどくあいまいだ」
「『こどもの幸せを第一とかんがえる』ってやつだろ?」
ジャンの引用にうなずき、わらうような悩むような顔をした。
「 『なに』が幸せなのかを考えるかで、まったく違うこたえがでる。 ―― ただ、テリーの場合はおれたち歴代の保安官がずっとようすをみに行き続けてたし、州の役人もなんども訪問してて、そのみんなの感想はどれも、『テリーは幸せそうだ』ってものだ」
「そりゃ、その環境しか知らないからだとおもうけど」
冷めたウィルの声に、やっぱりこの男だけ、好きになれそうもないとライアンはおもいながらも、とりあえずわらってみせ、だからあの教会のことは、あとでテリーに説明させるよ、と《貴族様》にいいきかせる。