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『狼男』退治
「 芝居とか映画にでてくる『狼男』は、魔女に呪いをかけられてるだけで、ほんとは《優しく美しい人間の男》で、最後はもとの姿にもどって幸せになるってはなしだけど、この山に伝わる『狼男』は狂暴で言葉が通じない動物で、人を襲う。 それをダゲッドム族が、狼の狩りが得意だったスーフ族といっしょに退治したっていう伝説だ。ダゲッドム族が『狼男』に毒をのませて、スーフ族が銀の矢じりでしとめた」
ひゅう、とからかうようにウィルが口を鳴らす。
それに眉をしかめたライアンは、《銀》は魔除けにきくんだ、といってからつづけた。
「心臓を銀の矢で射抜かれた『狼男』の遺体を、あのアペレ山の奥にある教会がひきとって、閉じ込めてる」
「 『とじこめ』? ・・・だって、心臓を射抜いてるんだろ?」
ザックが、おれ聞き間違ってる?とまわりをみる。
ライアンは、合ってるよ、とうなずいた。
「『心臓を射抜いた』のに、『狼男』の遺体は、血もながさず、腐らなかったから、ダゲッドム族とスーフ族で、そのからだを閉じ込めることにしたってきいた」