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お誘い
よっていくと、帽子の男はむかいの椅子をしめして「座らないか」とわらいかけ、女には「ビールを三人分」と勝手に注文する。
「おれらは飲まない」
すぐにケンが言って、それに一瞬顔をしかめた男が立ったままの二人をみて、ジュースがよかったか、と黄ばんだ歯をみせてわらった。
「ジュースはもう飲んだよ。おれたちに何か用?」
ザックが気にさわった様子もなく聞くと、男は二人をみくらべるようにみあげ、ゆっくりとした動作でポケットに手をいれた。
「 ―― 終点までいくのか?」
とりだした銀色のケースから葉巻をだしながら、立ったままの若い二人をみくらべて、ケンのほうにケースをさしだした。
「遠慮する。 おれたちは『仕事』で終点まで行く」
「狩猟仲間か?」
男は葉巻の先でザックをさす。
ザックが口を開く前に続けた。
「いいことだ。 ―― おまえらみたいなのがいれば、心強いってもんだ。 どうだ?おれの仲間にはいらないか?」