密猟者が犯人
「でも、―― テリーとライアンははじめっからそれはないって言いきってる。あたしにいわせれば、それじゃあ『犯人』は、いったい何なの?ってことになる」
言って、男たちに挑戦するような目をむけ、いい?と指をたてた。
「 あたしは、ここに移住する前に、山の動物についてかなり調べてからメリッサに提案した。 雪山の牧場で家畜を飼おうっていうんだから当然でしょ? ―― ここの森には『野犬』がいて、それらは春先にうまれた家畜をねらうだけで、ほかの肉食動物は、こんな山のふもとには、おりてこない。 なぜなら、ステラの森のほうが、よっぽど獲物があふれていて、それらは『野犬』とちがって、めったに山をおりてこないから」
そうだよね?とライアンに目をむける。うなずくのをみとどけた女は、教師のように、よりかかっていた壁からはなれ、ボードの前に立つ。
「 どの死骸も、落ちてたから、ほかの動物にはらわたを喰われたんだよ。 初めは大型の鹿、つぎにリス。だけど、同じ日にやられてるとかもあったよね。こっちのイタチとか。それにフクロウは巣穴にいたのを狙われたんだ。小鳥なんか、数羽まとめてってのもあったよね。 あたしらがここひと月みまわったけど、雪が降ってて足跡はだめだし、銃声もきいてないから、むこうも用心して密猟してるんでしょ。 ―― はじめに、この鹿をしとめて気がよくなったか、ためし撃ちを続けようとしたのかは知らないけど、この一か月で山の奥にむかっていきながら、目についた動物をかたっぱしから狙ったるってかんじ。 ―― これの『犯人』は、別荘地区に住んでる《上流階級の密猟者》だよ」
断定するように両手をうちあわせた。