ハーブティー
「 ―― ほんとはいい人なんです」
ロビーが笑いながらカップを用意する。
「いまはすこし、人とのつきあいに疲れちゃってるところですけどね。なにも、拗ねてここにきたわけじゃなくて、愛する山と森に癒されたいって思ってここを希望したんですが、自分でもそれに気付いてないくらい、ちょっと間が抜けたところのある人なんです」
すこしわらいながらコーヒーの用意をするロビーの顔を、横からザックがのぞきこむ。
「 あんたは?やっぱりここを希望してきたわけ?」
眉をあげてきく若者を、子犬をみるようにみかえしたロビーはわらってくびをふった。
「 ・・・いま、ライアンの気持ちがちょっと理解できたよ。ひさしぶりに人がわずらわしいっておもった」
「ごめん、もう聞かないよ」
ちょっとした失敗をあやまるようなザックに、いやいいんだ、とわらい、じつはぼくも人間関係で失敗して、ここを希望したんだとカップをわたした。
うけとったザックが、開きそうになる口をそれでとめるように、すぐ口をつけると、盛大にまゆをしかめた。
「 ―― なに?このお茶」
「サマンサのつくる『ハーブティー』ってやつだよ。気持ちを落ち着かせる効果がある」
「なら、それをもっともらって、落ち着いておけ」
命じながらはいってきたバートが暖炉によって上着をぬいだ。