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ファイル№08 ― 移動
ファイル№08 ― 移動 ―
迎えがくるまえに、金髪をいじる貴族がライアンによってきて、声をひそめた。
「ねえ、ここって《魔女》はいないかわりに、野生動物がいるのが売りなんじゃないの? まさか、昔からの『言い伝え』とかで、なにか《べつのもの》がいるとかいうはなしじゃないよね?」
その顔は、不安というより、面倒ごとをいやがる顔だった。
ライアンはこの男だけ、最後まで信頼できそうもないなとおもいながら、こんなへんぴなところまでとどいた噂を、この相手にたしかめたくなってしまった。
「おたくら、A班って、うわさで『中央劇場の呪いをといた』とかいわれてるけど、そういう方面のほうが得意なんだろう? 山にはいって狩りとかできるかい?」
ウィルはさらに顔をしかめただけだったが、ケンとザックは爆笑した。
「きいたか?おれたち、そういう方面の部隊で知られてるらしい」
ジャンまでもおもしろそうな顔でバートをみたが、班の責任者はどうでもよさそうにうなずいただけだ。
ルイはきこえなかったのか、顎をなで、窓のむこうをながめている。