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早く帰りたい
「なんだこいつら、まったくやる気ねえみたいだ」
「エボフ、こんなやつらに声をかけてもしかたねえ」
むこうでわらう男たちが、煙草をすう男に手をふってみせる。だが、きびしい声が返った。
「 いいかおまえら、もし、おれたちより先にこの《警備官》たちが獲物をしとめたら、おれたちに報酬はないんだぞ」
煙草を指にはさんでエボフとよばれた男が言うが、それに手をたたいた仲間は、ザックがきいたこともない《言語》でなにかいいあって笑い出す。
「 『ありえない』かどうかは、やってみないとわからねえけどな 」
ジャンの言葉に、むこうでわらっていたおとこたちが笑みをけした。
「おまえ、おれたちの言葉を知ってるのか?」
また、おもしろいものをみつけたように、黄色い歯の男は、煙草のけむりをはく。
ちょっとだけな、と肩をすくめたジャンは、続けて、やる気はなくとも仕事だから、やるこたやるさ、とバートをみた。
「おれは、早く帰りたいだけだ」
われらがボスは言い切った。