ファイル№06 ― 誘い
ファイル№06 ― 誘い ―
「おい、ぼうず」
そうよばれたのは自分だろうとおもって振り返ると、やっぱりあの毛皮の帽子をかぶった歯の黄色い男がいて、ザックではなく、横にいるケンをみていた。
同じような毛皮の帽子をかぶり、むこうにいる四人の男たちは、にらむという形容があたるようなまなざしを送ってくる。
終点の駅につき、その小さなホームにおりたのは、やはりザックたち警備官と、あのスーフ族の男たちだけだった。
むこうはこちらとちがい、ライフルのケースと小さな荷物しか、かついでいない。
ケンと目をあわせた男はにやけてから、むこうにいる班長をゆびさした。
「―― あれが、おまえらのボスか?」
気づいたバートが男の前までやってきた。
「あんたたち、スーフ族だな?だれにやとわれてる?」
挨拶もなにもなく発せられた言葉に、あいてはおもしろがるような笑みをうかべてから銀の立派な煙草入れを取り出した。バートの方へむけ、首をふられると、一本とりだし、端をかみきってすてる。
「いまどき、珍しいくらい失礼なやつだな」
「ああ、よく言われる。気にさわったらすまん」