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遠吠え
ジャンが代表して理由を聞く前に、レイに贈るワインをさがしてたんだ、と聞かされ、みんなも納得する。
班長の婚約者であるレイは、レストランの経営に携わり、食に関する仕事もしている。
「市場にでまわってる希少ワインだと、すぐに値段がばれて却下される」
「あんた、いったいいくらのワインを贈ろうとしたんだ?」
あきれたようにジャンがきき、返されたこたえに、それおれの車が買える値段だよ、とウィルが苦笑したとき、ケンが、シっ、と指を立てた。
窓をあけると、刺すような冷たさの風といっしょに、それがきこえた。
ヲ オ ぉ ぉ ぉぉぉぉ ぉぉ お オ ウ
「 遠吠えだね。 野犬か、狼か、 正体不明の動物の」
ルイがのんきな声で感心するよういうのに合わせるようにもう一度ないたそれは、すぐに風の音にけされていった。