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離婚
妻だった女性はいわゆる『上流階級』に属する人間で、《バーノルドの森体験ハイキングコース》に申し込み、そのとき担当だったライアンと意気投合して、結婚にまで至った。 と思っていた。こっちは勝手に。
離婚までの道のりで判明したのは、あのときはそういう自然と触れ合うための期間であって、あなたとの相性もあのときはぴったりだった。ただそのあと、こっちに歩み寄ってくれるかと思ったのに、あなたはまったくそうならなかった、という彼女の考え方だった。
歩み寄る?あの、ほぼ毎日、どこかのしらない人間と引き合わされるパーティーづけの毎日と、彼女のための(洋服の)買い物、(みかけを整える)通院、(名前をうる)お茶会への送迎と、どこだかの『貴族』と顔をあわせたとか、名前を憶えてもらったとかいう自慢大会のような夕食の会を、この先もずっと喜んで続けろ、という意味か?