次回からは
「なあ、『いやなこと』って?」
きゅうにだまりこんでしまったジャンのほうへ身をのりだし、まだ不安そうな顔のザックが、ジャンの皿にある揚げ物のポテトをさらう。
みかねたニコルがじぶんのチキンサンドが残った箱をザックの前においた。
「これはいいよ。ニコルのだし」
「・・・ザック、そのイモは、このおれの皿にあるだろ?」
それは知ってると口にイモをほうりこんだ二年目の『新人』に、自分へ対しての礼儀作法をしこんだほうがいいのかどうか迷いはじめたジャンに、ニコルがだまって首をふり、まだ育ち盛りだ、とかばうことを口にする。
「まだ? いや、そうかもしれないが、ここで一発叱っておかないと、このさきのおれへの態度が心配だ」
「ジャン、違うんだ。ザックはおまえのことが大好きすぎて、いっしょのものを食べたくなっただけだ。毎回じゃないし、きょうはおれたち三人しかいない。 ふだんはこんな行儀が悪いことをするやつじゃないし、次回からはきっと、了承を得てからやる。 な?そうだろ?」
ニコルがまるで行儀の悪い子犬をかばうようなことを口にし、ザックはイモを咀嚼しながらちょっと考える間をおき、「 うん」と首をたてにふった。
その顔をみていると、こいつがロビーにむかって、『うちの班には、ジャンっていうパパと、ニコルっていうママがいる』と宣言していた場面がジャンの脳裏をよぎる。
おれはおまえみたいな息子もった覚えはねえよ、というこたえをだそうとしたとき、こちらに片手をあげる男が食堂のいりぐちのほうからやってきた。