ファイル№42 ― 気になること
ファイル№42 ― 気になること ―
「そういやザック、ちょっとききたんだけど」
ジャンは次のサンドウィッチをつまみあげ、ちょっと雪焼けしてまだ鼻が赤い新人をよぶ。
「ロビーはもう質問にも答えられない状態だから警察のほうじゃ正式に確認してないらしいが、 ―― あいつが、あのとき、『きいたとおり』っていったの、覚えてるか?」
「覚えてるよ。 コルボクは、ロビーについてた『悪い精霊』に、いろいろささやかれてたんだろうって言ってた」
「そうだな。うちの班長が撃った『よくない山の精霊』に『きいた』っていうなら、そいつはもう《この世》にいないからいいが、・・・ベインが心配したみたいに、この中央の《街》で、普通に《クスリ》を『売ってるやつ』から『きいた』としたらどうだ?」
「え?クスリの売人に、あの『山』でやるようにすすめられたっていう意味?」
これに、ニコルが身をのりだした。
「どういうことだ?そりゃたしかに、このごろまた売人が増えたってきいたが」
不安そうな二人の視線をうけ、ジャンはいつものように人を安心させる笑顔をうかべてみせた。
「 いや。ちょっと気にかかっただけだ。・・・なにしろ、けっきょくまたジョーに最後を任せるようなことになったし、ライアンが帰るときに、なんだかいやなこと言うし・・・」
あの保安官はまた、あの寒い山にある監視所へと帰っていった。
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最後に高級レストランでおこなわれた『面会』あと、ジョーといっしょに警備官たちと合流し、レイも調理場にはいった気取らないうまい昼飯を食べたあと、この場に来られなかったバートによろしく伝えてくれ、とジャンの横に座ったライアンは、なんともいえない笑顔をうかべ、「 ―― A班には感謝している」といってすぐに、バーノルドの森事件も、こういう方面の解決だったのだろう、と質問ではない言葉をぶつけてきた。