家とワイン
「『避難用の地下室』なんだって。 ライアンが住んでる保安官用の家にあったんだけど、ライアンはいままでちゃんと降りて見たことがなかったらしくて、そこの奥にワインがたくさんあるってのは、知らなかったんだってさ」
ルイのパパからの指令で、これを買い占めてかえることになって、代金は先住民族保存協会にはらったというその額をきいて、ニコルは目をみひらいた。
「ワインをのせた《高級車》でも買ったのか?」
「バートはそういう気で買ったんだろうけど、ウィルだけ、『買うのをやめておく』って嫌そうな顔してた。 ワインをつくったのが『狼男』たちで、それってどうもウィルのご先祖様かもしれないからって」
「・・・なんだって?ザック、もう一度説明してくれるか?」
太い首をまげた男は、そういいながらもジャンをみている。
だからさあ、とむきになったザックはテーブルに身をのりだす。
「ワインももちろん『狼男』のもので、保安官用の最初の家も、『狼男』の家だったんだって。ほら、山小屋のほうはいわゆる別荘ってことだよ。どっちもダゲッドム族に『狼男』が渡して、そっちの家は最初にやってきた保安官が、ダゲッドム族からとりあげたんじゃないかって、ルイが言ってた。 ダゲッドム族も、もともと家をもたない先住民族だから、とられても、わりとどうでもよかったんじゃないかって」
「とりあげた保安官のほうは、心配だったから《杭の壁》もつくって、もとからあった地下室を、《避難用》ってことにしたんだろ。ワインの保存庫だってきづかないまま」
ジャンが社内の食堂で軽食の店をだすビルご自慢のサンドウィッチをつまみながら、その家をうつした写真をはじいた。