おぼしめし
ええまあ、とその目をみかえすと、無言で数秒みつめあうことになる。
「 ―― ふむ。平気そうだな。エバーソンさん、まずはおれから礼をいおう」
みあっためもとがゆるみ、カップをおいた。
「なんの礼かしらないが、ライアンでけっこうだ。あんた、あの《教会》にかかわってるのか?」
こちらはようやくコーヒーに口をつける気になった。
「《教会》はベインがこれから面倒をみてくれることになっただろ?それと、先住民族保存協会だ。これからどうするかは、テリーたちとはなしあうはずだ。 サマンサは、・・・もうその話し合いに参加することはないだろう。これは誰のせいでもない神の思し召しだ」
「入院したのは知ってる。あの《教会》で保存協会の役員たちと話し合ってるときにだろう?」
テリーは息子として母親に施設にはいってほしいと頼み、サマンサは大声で『狼男』の呪いのせいで息子はこんなことを言うんだと叫び、その場で倒れた。 「呪いで倒れたんじゃないのは医学が証明してくれたけど、やっぱりテリーはかなり落ち込んだよ」
「いい息子だ。おれも会ったときに励ましたが、スーフ族の友達たちも彼を支えてくれるだろう」
「ああ。あの《教会》を観光用にするらしい。 そのかわり、山小屋を彼に返すんだろ?」
《狼男》へ。
「いや。サミュエルはもう、別の教会へ移り住むからな。あの山にある小屋もからだが若くなってから何度か使って心残りはないと言っていた。そのままテリーたちへ渡す。 テリーはアニーたちと協力してまた夏場に運営するらしいが、上流階級限定はやめると言っていた」
「 あんた、アニーとメリッサにもこうやって『面接』したのか?」
「《狼男》に会った人物には、こうして『面会』している。 ―― 保安官、おれには何の権限もない。どういうことをするか決めるのは、彼女だ」
ジョーがそういったとたん、彼の右隣の席に女が座っていた。