いらっしゃいませ
ここからみえるのは三階建ての平らな屋根の建物と、砂色の石がつみあがった低い壁。
近づくと、その建物にくっついた金属製のドアがみえた。
この細い通り沿いの一区画まるごとが《その建物》だと気づいたのと、通りのむこうからこちらをとらえた数台の防犯用カメラに気づいたのは同時で、冗談だろ、という言葉がすぐにでた。
「 ―― おい、ここ、あの、『サイ』の裏側なのか?」
ああ、そうだね、とウィルが手にした携帯電話でどこかへかけると、建物についた重そうなドアがゆっくりとひらき、眼鏡をかけた黒髪の男が顔をだした。
「 いらっしゃいませ。ようこそ、ライアン・エバーソンさま 」
表とおなじようにドアをひらきながら出た男は頭をさげると、急にいやそうな顔でウィルをみやり、戴冠式にでもよばれたか?とあきらかにばかにするわらいを浮かべた。
「ジャンの、シャツにデニムパンツの格好より、かなりましだとおもうけど?」
「ああ。おまえらの服装について考える時期はとっくにすぎてるから安心しろ。《警備官》は二階のいつもの部屋だ。 エバーソンさまは、そのアホたちにかかわらず、どうぞこちらへ」
にっこりと微笑みかけられ、しかたなくライアンは《警備官》より先に中へ足をいれる。
じゃあ、あとでな、とジャンたちにみおくられ、眼鏡の男のあとを追うと、足元の絨毯の色と壁の色が暗いものへと変わった。
ふたつほどドアのまえをすぎて、三つ目のドアをひらいた男に、こちらへどうぞ、と目でまねかれる。
眼鏡の男については、よろしければ『幽霊は 』をひろってやってください。。。