荷をおろすため
本来なら、こんな扱いは素直に受け入れられないぐらいの誇りをもって仕事をしている《保安官》も、ここまでの出来事や、ゆうべのった長距離列車の移動の疲れもあり、すこし緊張気味で話した上官二人と握手して部屋をでたときには、もうどうでもいいような気分で警備官の班長に電話をかけ、とりあえず一度寝る、とホテルにむかった。
ベッドにたおれこむときにまたすこし、事件を思い出し、アペレ山の教会で会ったベインを思い出しながら、あの《治安部》がやってくれるなら安心だろう、と眠りにおちた。
夜になってA班の副班長から電話がはいってよびだされて連れていかれた店には、ほかの班員たちもいて、ようやく肩の荷をおろせたな、とグラスをわたされたときに、はじめてほんとうに荷をおろせた気になった。
上等な酒もおごってもらい、明日は中央劇場の見学でもして帰ろうとおもっていたのに、ケンにそれは中止だといわれ、ジャンには、『明日この事件のほんとうの最後の荷物をおろすのに、会ってほしい男がいる』などと言われてしまったのだ。
しかもそいつに会うのは、あの高級レストランとして名高い『サイ』で、という設定つきで。