Clash
「まだわかりませんか?ぼくに罪はないんですよ。 こんどの《食い散らかしの犯人》は『狼男』だし、狼狩りにきたスーフ族はぼくからナイフをうばった『狼男』に殺された。そしてその『狼男』をぼくは射殺しましたが、そんなモノこの世には存在しないんだ。償いようがないでしょう? だからライアン、それと警備官たちも、ぼくとはなしをあわせたほうがいい。獣の食い散らかしも、スーフ族を殺したのも、あそこで死んでる『自分を狼男だとおもいこんでる戸籍もない男』がやったって。 実際彼は毒矢をさして一人殺してるし、それの指紋ならでるだろうし、残りの矢をもってきたのも彼だ。 この、戸籍の登録もない頭のおかしい男をずっとかくまっていたのは先住民族たちで、そのおかげか、今回死んだのは『そっち』のやつらばっかりだ」
「『そっち』―― だと?」
ライアンが立ち上がるが、ジャンに肩をおさえられる。
「そうさ、先住民族なんてみんな、ちょっと前まで戸籍もなかった。おれたちとは言葉もちがうし、凝り固まった考え方や変な迷信やまじないにうもれてる」
「おまえって やつはっ、」
ジャンをおしのけてライアンがふみだしたとき、テリーの悲鳴が響いたとおもったら、空からふってきた大きなものが、一瞬でロビーをつぶした。