ファイル№35 ― 正体
ここから血の表現ありますので、ご注意を。。。
ファイル№35 ― 正体 ―
血で汚れた顔と髪を肩にこすりつける男の、ひきつってとぎれたわらいが耳へと直につたわる。
つきはなそうとしたが、もう無理だった。
わらい続けるロビーは半分前をあけた上着の中に手をいれると、ナイフをとりだし、ライアンの首へ刃をむけて顔をあげた。
「 このまま横に切ってもいいけど、額にこれを突き刺すっていうのもいいかな。 あなた、ほんっとお人よしって言うか、ぬけてるっていうか。まあ、おかげでぼくも楽しくすごせましたよ。なにより、ひとのめを気にせずにいられるのが、この『狼監視所』のいいところだ。ああ、『狼監視所』っていうのはここの蔑称で、本部との通信もままならないこんなところに来るのは、たいてい、ほかの監視所で問題を起こしたとかでとばされてくるやつだからだ。ぼくもそう。あなたはみずから希望したっていう変人だ」
頬にナイフの刃を沿わせるようにあててきた。
警備官たちがあきれたように腰に手をやったり、腕をくんでこちらをみている。
たしかに油断したのは悪かったが、なにしろ相棒なんだからしかたないだろう、といいたいのをこらえ、ライアンはすぐそこにある刃物を横目でみた。
ナイフの刃も柄も、血がついたままだった。