信じたいから
「そんな・・・いや、あいつは後ろから、喉をきったんだ。だからかかってない」
「傷は、あごの付け根から鎖骨までだった」
「いや・・・」
「いいかロビーおれをみろ! ―― ナイフがないなら、空のケースをみせるんだ」
彼のナイフは腰よりやや高いあばら骨の横に、特注のベルトでつけられる。
山は好きではないが、ステラの森でキャンプをするのが好きだと自己紹介した男のナイフは、使うのは調理にですよ、とみせてくれたとき、たしかに包丁なみだな、とその大きさをわらったほどだ。
刃は厚く、よく研がれていたし、実際、家の中の調理につかわれているのをみたこともある。
テリーの持つ獲物解体用とほぼおなじ大きさだが、切れ味はまさっているかもしれない。
「 ・・・ライアン・・・、ぼくのこと、信じてくれないんですね? 」
ロビーはゆっくりと上着のジッパーをおろしはじめた。
「信じたいから、ナイフのケースをみせろ、と言ってるんだ」
「そうか・・・やっぱり・・・」
つぶやくようにこぼし、がっくりと頭をたれたロビーが、こまかく肩をゆらしはじめた。
「・・・なあ、ロビー、なにかわけがあるならっ、」
泣き出したのかと思って声をかけたとき、突然ロビーに抱き着かれた。