ナイフは落としました
「きみのナイフ、みせてもらえる?」
「にげてるときに、落としました」
ロビーの困惑した視線をうけてライアンはまた肩をたたいて安心させる。
「おい、《警備官》どもよくきけ。 毒矢でカナンを殺したのはやっぱり狼男だ。二人でもみあったらしいから、まあしかたないとしても、残りのスーフ族をおってサマンサの家にきた狼男は二階の屋根にあらわれて、スーフ族の毒矢を置いた。それに、おれとテリーがおびきよせられてる間に、一階にいた彼らを殺し、ロビーは、―― 追いかけられたんだ。結果はにげおおせてこうして無事だった」
「へえ。最後まで捕まらないなんて、すごいね」
ライアンのはなしをきいても、ウィルがロビーにむける眼はかわらない。
「ついてたんです」
横にライアンがいてくれるからか、ロビーはウィルをにらみかえしてこたえた。
「 『ついてた』? ―― ぼくがきみに、ナイフだけ持って山にいくようすすめたのは、きみのナイフがすごく手入れされていて、大振りだけど、それを扱い慣れていそうだったからだ。 『狼男』はケガをしてる。きみがあのナイフで『狼男』に傷をおわせた?」
「襲われそうになったんで、もちろん戦いましたよ。だけど、勝てるわけないし、逃げた方が安全だった。ナイフは途中で落としちゃったんです。 『狼男』にけがをさせたら問題ですか?」