必死だった
ウィルは銃に残った弾を確認し、いい腕だね、とロビーに声をかけている。
「 ―― グリップが血まみれだよ。そんな手で、すべると思わなかった?」
「必死でしたから」
ロビーは低くこたえると、ようやく顔をあげて、自分の手をみた。
そこでようやく《血》に気づいたとでもいうように、手のひらを腹にこすりつけ、なんどもぬぐう。
そのとき、斜面の下の方から、おおーい、と手をふる影がふたつみえた。
「 ―― ライアンとテリーだ」
髪をかきまわし、顔をしかめたジャンが手をあげてみせる。
走りよったライアンは、ロビーをみつけると安心したような笑顔で、名をよんだ。
「 ああ、ロビー、無事でよかった。おれがテリーのはなしを間に受けすぎたせいで、こんなことになって、すまない」
ライフルをもたないほうの腕をロビーにまわして背をたたくと、顔をのぞきこみ「おい、血がすごいじゃないか、へいきか?」と反応の薄い相棒のようすにあらためて気づいた。
「どこをやられた?」
「 いや、・・・ぼくはなんとも。 『狼男』がスーフ族を襲ったときに、その血がかかってしまって」
そういってむこうを見る。
そこには、倒れた狼男の名を叫んで走りよったテリーが、力をなくしたように雪に座り込んでいる。