あの男
「おい、どうした!偵察って言っただろ?」
いつのまにかあとを追ってきていたジャンとルイは、すぐに現状を判断し、むこうで仰向けに倒れた『狼男』のもとへルイが走る。
かがみこんで『狼男』をみていたルイが首をふってみせるのに、ザックとケンでおさえこんだコルボクが、ヲヲヲうう、と獣のような声をあげてまた暴れだした。
「彼は何もしていない!あの男だといっていた!」
腕を後ろでザックに抑えこまれ、ケンにだきつかれているスーフ族の男が顔を真っ赤にしてどなる。
『あの男』という視線の先には、ウィルに銃をとりあげられたロビーがいた。
「なにが、『あの男』なんだよ?」
興奮したコルボクを締め付けるように腕をまわしたケンが、いつものにやけ顔できくのに、「おれの仲間を殺した!」とこたえがかえる。
「おいおい、あの毒矢を手で刺せるなんて普通のやつには無理だろ?」
「ちがう!毒矢じゃなく、サマンサの家についたおれの仲間を、そいつが殺したんだ!」
コルボクの暴れる腕をおさえこんでいるザックはコルボクに落ち着くよういいきかせながら、ウィルの横で血に汚れた顔をこちらにむけるロビーをみた。
その顔に表情はなく、肩で息をしながらじっと足元を見つめている。