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数秒
「だめだ!狼男からはなれろ!スーフ族をやったみたいにその爪で喉をかききられるぞ!」
「爪で!?」
そうか、狼男にはするどい爪があるのか、とザックが思ったのと、ロビーが思いもしない動きをしたのが同時だった。
ここから起こったできごとは、ザックのなかではそれなりの時間だったはずだが、実際はほんの数秒だった。
ロビーに腕をつかみなおされ、ウィルの立っている方向へおもいきり押されると、油断していたのと予想しなかった力強さでそのままあおむいてウィルへと倒れこんでしまった。
自分のくちからあがった声とウィルの声がかさなったときに、ロビーがウィルのほうに腕をのばすのがみえ、ザックの頭の上でウィルが「くっそ」と吐き出したときには、むこうへかけだすロビーの姿がめにはいった。
それでも、そのときにはまだ意味がわかっていなくて、つぎに発砲音がひびいて、ようやく、目がさめるように頭がまわった。