散歩先は
「それって、テリーが作ってたっていう薬のこと?」
ウィルが嫌そうな顔でききかえす。
うなずいて、つぎの指をおりまげた男は、狼男はおれたちのようにとしをとらない、と警備官たちをみまわした。
「ひいじいさんが会ったとき、狼男は三十になるぐらいのみかけだった。それを、『秘薬』を飲んで七十すぎくらいにできる。ダゲッドム族は『秘薬』を飲んで年寄になった『狼男』をみて安心できたんだろうが、薬を飲ませる役をアマンダにおしつけた。『狼男』はそれもうけいれることにした」
けっこういやなはなしだな、とウィルがため息をついた。
しかたがない、とコルボクは曲げていた指をもどした。
「狼男の《動き》は人間をおそれさせる。 親父がこどものころ、年寄の狼男にあったときに肩車をしたまま教会の屋根にとびあがった、といっていた」
「みかけは年をとっても、『人間ではない動き』はそのままか?」ルイが首をかたむける。
「歳をとってるから屋根までしかあがれない、といったらしい。若いころは月夜で姿がかわると、気分がいいのでアペレ山からとびあがって、モーティス山脈のほうに散歩にいってたらしい」