掟
「教会で、エボフがタタと言い争ってたのがそれか?」
うなずいたコルボクが手袋をとった片手をたてると、小指を折る。
「 アマンダと『狼男』は夫婦になる。そのアマンダをダゲッドム族からもらう代わりに、『狼男』のあつめた薬やその『知識』すべてを、ダゲッドム族にわたす」
となりの指をまた折る。
「山にある教会は『狼男』が建てたものだが、そこにアマンダとくらす。その教会はこれから先住民族たちが交流するためにもつかい、話し合いにもつかう。『狼男』はそうして先住民族たちに常に見張られることになる。 教会で顔を合わせる民族同士でもめごとが起こった時は、温和なパレレ族がもめごとをおさめる」
ここで、三本目の指を折ろうとしたコルボクが、考えるように間をおいた。
「 ―― この《掟》をきいたダゲッドム族は、それなら『狼男』の『家』ももらおうと言い出した。それに、夫婦になるふたりに、もう教会の山からおりてこないように言った」
「まあ、そこは、アマンダが事故で死んだことにしたってのもあるとおもうよ」
ルイがダゲッドム族をかばうようにいいそえるが、スーフ族の男は首をふった。
「 ダゲッドム族は、二人に腹をたてていたんだ。 『狼男』はダゲッドム族の娘をえらんだのに、ダゲッドム族になることは拒んで、山の上で暮らすなんていうし、アマンダは、先住民族はそのうち数がへっていなくなるから、『狼男』の知識は、もっとみんなで分け合うものだと言って、みんなを怒らせた」
「なるほど。賢いひとだったんだな」
ルイが、つぶやく。