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ファイル№31 ― 愛と掟
ファイル№31 ― 愛と掟 ―
「 ―― アマンダも、『狼男』といっしょに踊って、こどもをつくるほうの『愛する』になったんだ」
「こどもがいるのか?」
驚いた声をあげたジャンには首をふる。
「こどもはいない。だが、サマンサは怒った。狼男がアマンダに『呪い』をかけてつれさったと思い込んでいる。 でもおれたちは『狼男』から、さいしょに『愛してる』といったのは、アマンダのほうだときいた」
ウィルがやはり疑うような顔で、「そればっかりは本人に確認しないとなあ」と前髪をさわる。
「確認はできない。アマンダはもう死んだ」
コルボクがこたえるのに、警備官たちは目を見かわした。
「 つまり、スーフ族は、アマンダが生きていたのを、知ってたのか?」
バートの低い声に、エボフからきいている、と息子はこたえる。
「 おれたちスーフ族は、あの教会に『狼男』がいるかぎり、約束の時以外は、もう『狼男』にかかわることもないはずだった。 アマンダと『狼男』が《愛を誓った》ときからこの《掟》がはじまった。これを決めたのは、『狼男』だ」