森ではなく山の中
ほんとに気温が低いのか?とザックがルイにきく。
子どものころ、マーノック湖の近くの上流階級の人間があつまる地区にくらしていたことがある男から、すぐ北にあるライセット州にも何度か行ったことがあるとは、きいていた。
「 それがほんとうなんだよ。 でもあれは、おれが思うに、マーノック湖のせいであって、あそこから急に気温が『あがる』ってほうが正しいとおもうよ。あの湖って、底からあたたかい水が湧いてるんだろ?」
そういえば遊泳禁止なのに、毎年水着のやつが大勢つかまるもんな、とザックはレオンをみた。
「たしかに、年間を通して泳ぎたがるやつらがいる。 ルイがいったアペレ山で数日遭難したやつが、マーノック湖でからだを温めてから戻ったなんて、笑いばなしみたいな実話もある」
「あそこ温泉なのか?」
うたがわしげに副班長がきく。
「そういう温度の場所もあるってことだ。―― とにかく、そのライセット州の方では『森』を『ステラの森』って呼んでいて、森はそのままフォロッコ山に続いてる。 その 、」
「 『森の中』とかいわないでくれよ」
さえぎったジャンの願いは通じたようで、レオンは一度口をとじて首をふった。
「 《 山の中 》だ。 まあ、フォロッコ山は、広いが標高はそれほどじゃないから、木がたくさん生えてて、でこぼこした森みたいなもんだ。木がへってくるあたりから標高もあがってアペレ山にはいったと思っていい」




