そこは畑
「 ああ、ダゲッドム族は、おれたちスーフ族のように狩りはしない。 もとは、家畜を何頭かつれて居心地のいい大陸を渡り歩く民族だった。おれたちスーフ族とは何の関係もなかったが、あるときフォロッコ山の下にやってきた。いま、サマンサの家があるところだ」
暖かい時期に家畜を放牧するにはちょうどいい、とウィルがいうのに、またコルボクが驚いた顔をむけてから、うなずいた。
「そのとおりだ。 そのころおれたちスーフ族はステラの森にすんでいた。 いまサマンサたちが家を建てているあの草原は、もとは『狼男の畑』だったところだ」
畑って、野菜育てたりする?というザックの質問に、薬になる草花も育てる彼にとって大切な場所だ、とこたえがかえる。
「そこに、あるときダゲッドム族がテントをはった。 畑に育っている野菜をかってにとって家畜が薬草を食べ荒らしはじめたから、おれたちはその土地には持ち主がいて、勝手に荒らすことは許されないと教えてやった。 だが、狼男は、それを許した。 ―― 彼は争いを好まないし、心が穏やかだ」
すると、ダゲッドム族はその畑をひろげはじめ、すっかり腰をおちつけてしまった。