ファイル№30 ― スーフ族と狼男
ファイル№30 ― スーフ族と狼男 ―
「 おれの親父からも聞いたろうが、ひいじいさんは『狼男』と友達だった。ステラの森からフォロッコ山にかけては、もともと、『狼男』のものだったとじいさんはこどものころから聞いていた。アペレ山の山小屋は、もとは彼の家だ」
「それ、テリーも言ってた」
ザックがうなずき、でも、それが奪われたって・・・と言葉をにごす。
「そうだ。順番よくはなすと、まず、おれたちの先祖より先に、狼男はここに住んでいた。あとからやってきたおれたちの先祖にも彼はよくしてくれたらしい。それに、おれたちの《神》がもともと《狼》をつかいにしていたせいもある。 おたがいを尊敬した。むこうは、《狼》のことをよく知っているおれたちに心をゆるし、『狼男』の姿になったときも、いっしょにすごした」
「それってやっぱ、本当に変わるもんなの?」
ウィルが前髪をはらうのに、コルボクはうなずく。
「そうだ。だが狼男は誰もおそわない。ただ、姿がかわって気分がよくなって、人間ではない動きをするだけだ」
「その気分がよくなった状態で、獣をとるのか?」
ケンのことばに顔をしかめてみせる。
「たしかに獣も仕留めるが、彼は生肉はたべない。 火をとおした、おれたちがしらない料理をふるまってくれるらしい」