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観光客用じゃない方
「 なあ、せっかくだから、《スーフ族》と《狼男》の『むかしばなし』を聞いておきたいんだけど」
ルイのおもいつきのような言葉に、ほかの男たちがうなずくのをみて、スーフ族の男はこの場のボスをみた。
目があったあいてはだまってうなずく。
「・・・そうか。 それなら、《観光客用》じゃないほうを話そう」
「そうこねえと、おもしろくねえもんな」
ケンが手をたたく。
コルボクは、この男がスーフ族の言葉も習慣も知っていて、雪の中もおなじくらいのはやさで走るのをみた。
きっと自分のしらない大陸の先住民族なのだろうと思い、おおきくうなずいてみせてから、はなしをはじめた。