凍死はしない
きのう山小屋にいくまえに同じようにつくった『休憩場所』は、初めからあった岩のおかげでそれほどしっかりとしたものをつくらずにすんだが、なにも風よけがない場所で休憩するためには、雪の壁も屋根も必要だった。
ザックはただ指示にしたがって穴を掘っていただけだが、気づけば雪のドームをくりぬいたものができあがり、その中に男七人おさまることができたうえに、ケンとルイが持っていたオイルバーナーでお湯をわかすこともできた。
穴掘りのおかげですっかりからだが温まったザックは、そこでようやくほかのみんなのようすをみて、凍死するかも、と思っていたのは自分だけだったようだときづく。
「まあ、ザックの気持ちもわかるよ」
ザックの素直な雪に対しての感想に、ウィルが目をとじ、今年はもうスキーもやめとこうかなあ、とため息をついた。それをきいたジャンが、それならおまえの道具一式はおれがかりるというのに、じゃあライセット州のウィルの別荘をみんなで借りて遊びにいこう、とルイが提案する。
「どうしてそういうことになるんだよ。スキーをしないってだけで、別荘にはいくよ」
すかさずケンが、「もう雪はうんざりだって思ったんだろ?」それなら別荘にもいかねえだろ、と指摘すると、眉をよせた貴族の男は言い返さない。