恩知らず
「 なんだい、あんたたちさっさとあの『狼男』を殺してきな!ほうっておいたらもっと人が死ぬよ! テリー!これでわかったろ?あいつはきっと、あたしをねらってまた来るよ!」
さけぶサマンサの肩をメリッサが「へいきよ」となでる。それをたたいて、へいきじゃないさ、とふりはらった老婆に、「いいかげんにしろ!!」と息子がどなった。
「これでわかったよ!サミーは危険な毒矢をこれいじょうつかいたくないからここに持ってきたんだ。スーフ族を殺したのは、その毒矢で自分がやられそうになって身をまもっただけだ! 彼は、なんどもいうけどいいやつだ!やさしいんだよ!だれにでも! あんたとちがう! っくっそ、いいか、かあさん、あんたはちっともやさしくない!だれにも!ぜんぜん! サミーをみならえ!みならうべきなんだ!もっと、 ―― やさしいひとになってほしいんだよ、かあさん・・・・」
さいごは力が抜けたようになり、母親の顔もみずに浴室をでていった。
口をあけたままなにも反応しない老婆を女二人にまかせ、ライアンはあわててテリーをおいかけ、背中をたたき、よく言い切った、とほめたが、テリーは口をひきむすんで泣いていた。
「いいか、テリー。おまえは立派だ。母親の悪いところを指摘してなおしてやるのは、家族の役目だ。息子の立場なら、当然だろ?」
「・・・おれ、恩知らずって思われたかな・・・」
「バカを言うな。最高の息子だ」
わらってテリーの肩をたたき、階段をおりきったところで目にとびこんだそれが、ライアンには一瞬、理解できなかった。
ご注意を!次は血があふれる残虐場面となります。