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ファイル№27 ― 混乱
ファイル№27 ― 混乱 ―
「たすけてくれ!」
雪の中を走ってきたスーフ族の男ふたりが、たおれこむようにして玄関のポーチに手をかけた。
ライアンはあたりをみまわしながら、男たちに手をかし、中にいれろ、とロビーに指示した。ライフルをかまえ、ゆっくりと目だけ動かす。どこにもあとを追ってきそうな影はみあたらない。
中にもどると、スーフ族の男たちはせまいテーブルセットの足元の床で、息を切らしながら、顔をおおったり腕をさすって、ライアンのしらない言語を並べ続けている。
「おちつけ。おまえたち、《狼男》をどうした?」
ライフルをふたりにむけながらきく。
ロビーがそれに異をとなえるような目をむけるが、毒矢をもってたんだろう?とライフルの先をひとりにむけた。
「・・・おれたちじゃない。毒矢をもっていたカナンは、《狼男》に殺された」
「突然暴れたのか?」
これに、上からおりてきたテリーが、そんなわけない、とこたえる。
「おまえたちが、サミーになにかしようとしたんだろ?薬は?連れ出すときにあの秘薬を全部のませたのか?」