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自由にして
サマンサの寝室のベッドには長い白い髪の女がこしかけ、すぐよこにアニーが立ち、脇にあるテーブルセットに、肉付きのよい金髪の女がポットからカップにお茶をそそいでいた。
「あら、早かったわね。いまあなたたちのお茶も用意するわ」
メリッサがロビーの肩をたたき、ぽっちゃりしたからだをゆするようにして部屋をでていこうとすると、テリーが叫びながらベッドに走った。
「かあさん!もうサミーを自由にしてやってよ!」
ベッドにすわる年寄の肩をつかんでゆする。
「またおまえはそうやって、『狼男』にいいように操られてるのがわからないのかい?」
「操られてなんかないよ!」
言い争いはじめるふたりの間に、メリッサが肉付きのいい腕をわりこませ、落ち着くように手のひらを下へむけ、ひらひらとゆらす。
テリーがあやまりながら、サマンサからはなれた。
年寄りは、ライアンのほうをみながら、「この怪力女がドアを壊したんだよ!」とさけんだ。