※※ ― 相談
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娘は踊っているときと同じかろやかさで手をにぎり、おなじ目まぐるしさでさまざまな表情をみせた。
彼の好む時間のことを、おひるねの時間とよんで、娘はほんとに眠ってしまう。
この時間がずっと続くように彼は娘に『仲間』からはなれ、自分といっしょに暮らしてほしいと願いでた。
娘はほほえんで、うけいれてくれた。
だが、彼女の『仲間』たちには、怒る者もいた。
このことを相談したのは、《狼》を神のつかいだとよぶ男だ。
彼はうたうように、ふたりは恋におちたのだからしかたない、と言った。
言ってから、むずかしいことになるぞ、とうなるような声をだし、なぜか腹をたてたように、指でテーブルをたたいた。
「 おまえさんは、おれたちにとっては《神のつかい》の仲間だが、ダゲッドム族にとっては、もっとちがう存在だ。あいつらの《神》そのものに近い。 それなのに、その《神》が仲間の娘と恋におちたといえば、《神》は《神》でなくなるぞ。 ―― そうだ、えらそうに娘を差し出せ、と言ってやった方が《神》らしくていい。 いままで、おまえたちに分けた知恵の代価だと言ってやれ」
代価?いや、彼女にかわるものなんてない、とこたえると、男は煙草の葉をとりだして口に含んだ。
しばらく噛んでから暖炉のほうへゆき、火の中に吐き出した。
「 あんたには、おれたちはいろいろな借りがある。 だがぞれを、ほかの種族のまえではいいたくない。 ―― こうしよう。もしこの先、ダゲッドム族があんたのことを《危険な生き物》だと言い出したりしたら、おれたちであんたを『狩る』という。 やりかたは、バーノルドの森の魔女たちにも伝わる、《銀の弾》で退治するやり方だ。 あんたに《銀の弾》が通用しないってことは、人間だとこのおれしか知らないんだろう?」
「あとは、アマンダだ」
このこたえに、スーフ族の長は手を打ってわらった。
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