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おれじゃない
斜面をくだりきった谷あいを流れる川は、幅はそれほどではないが深そうな緑色をしている。
川原にはこぶしほどの石がひろがり、ところどころに大きな岩や倒木がある。川原の石の上には雪はつもっていないが、岩や倒木にはしっかりとつもり、温度差があるのがわかる。
「こっちだ」
おりてきたジャンたちに下で待っていたコルボクが手をふる。
「おれがやったわけじゃない」
その言葉の意味は、つもった雪の中にうもれるように人が倒れているのをさしている。
おいついたザックの目に、倒れている男の被っているスーフ族の毛皮がとびこむ。コルボクのものと似ているが、フードはなく、つかわれている毛皮もちがう。
むこうにはライフルのケースが二つ落ちていた。ケンがそれをひろい、ひとつは空だといって中身があるほうをウィルにわたす。
その横に立つバートはこの場から続いている荒れた足跡をながめていた。
「仲間われか?」
ジャンはコルボクをふりかえった。