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雲は動かず
いくぞ、というジャンの号令がでたときには、バートはもう数メートル先まで、ケンとコルボクの通ったあとをおっていた。
すぐあとにウィルがつづく。
強風にあおられ、顔の感覚もなくなってきたザックは、上着の襟をたてて一番上までジッパーをしめた。だが、数分歩くうちに暑くなり、襟をひらく。
雪のかたまりは小さくなったような気がする。
「雪、やむかな?」
前をゆくジャンにきくと、空をあおいだ副班長は、いい兆候だ、と親指をたてた。
「そうかな?雲が動いてないけど」
後ろにいたルイが空をゆびさす。
「こんなに風があるのに雲が動いていかないなんて、呪いかもね」
それに、ジャンが立てていた親指を下へむける。
「おれたちはあの煙草を吸ってる。これいじょう嫌なことをいうな」
了解するようにルイが片手をあげたとき、風の中にピイっとみじかく高い音がひびき、みんなでいまの指笛の方向をさぐる。
次の場面より、血などの描写出てまいります。ご注意を