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川沿いのルート
風も雪もまだおさまらず、ときどき視界が『白』で消される。
会話も風がゆるんだときに大声で交わさなければ届かない。
警備官たちは目の保護用で色の濃いグラスをかけているので、アイコンタクトは無理で、ハンドサインか、大声での指示しか通らない。
「つまりは、スーフ族が道を選ぶとしたら、ここの下にある川沿いの低いルートを選ぶ、ってことだな?」
バートがゆびさしたそこまで、足もとの斜面が吸い込まれるような角度で続いているようにザックにはみえた。
木々がまた増えて、まっすぐに下まではみおろすこともできないし、実際にはそれほどの急斜面ではないはずなのに。
「ここの川って、深いのかな・・・」
今おりている斜面と、むこうの斜面が下で合わさる場所にある川のことを想像してザックがひとりごとのようにつぶやくが、そうかもね、と近くにいたウィルが返事をくれる。
「この雪だと、つれだした『狼男』もいっしょに歩かせるしかないだろうから、きみたちが教会までつかった道を、そのままもどってるのかもな」
なにしろ一度人が通ったあとがあれば、歩くのは楽だ、とルイが斜面をさす。