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息子にたくす
「 いや、ぼうず、そいつを連れて行ってくれ」
すこし落ち着きをとりもどした顔色で、葉巻をくわえた男が、そいつはおれの息子のコルボクだ、と指をさす。
「 ―― おれも行きたいが、あいつらの顔をみたらナイフで首を切っちまいそうだ。 いいか息子よ。《警備官》のボスの指示にしたがえ。 ライフルはおいてゆくんだ。あいつらを『生きたまま』連れて帰ってこい」
だまってうなずいたコルボクは、バートをみた。
バートはすこし目をあわせてから、うなずく。
「 それなら、コルボクはケンと行動しろ。 その『二匹』への指示はウィルにまかせる。 ザックは迷子にならないようジャンからはなれるな」
「迷子になんかならねえよ。ようやく犬扱いから卒業できたぜ」
ケンにむかって自慢げにあごをあげてみせたザックの頭をウィルがたたいて言った。
「《子犬》は狩りにつれていけないからね」
これにより、ザックはスーフ族たちにしばらくのあいだ『子犬』という名前でよばれることになった。