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ファイル№24 ― 裏切り
ファイル№24 ― 裏切り ―
それをみおくったライアンが、タタにきく。
「『狼男』は、どこに隠してたんだ?」
「隠してない」
もう隠すことはない、と両腕をひろげてみせたタタは、ようやく休むことができたように、あいている椅子に腰をおとした。
「・・・いや、だってどこにも、からだの弱った六十代の男なんていなかった」
ライアンは顎をこする。
「ああ。彼はもう、 ―― おれよりずっと若いよ」
「・・・なに?」
ききかえしたライアンに、タタはすこしあんしんしたような顔でわらってみせた。
「テリーのおかげで、『狼男』は、いま、元気で、ずっと若くなってる。 おまえさんが来た時に、ランプを持ってきた男がいたろう?」
「・・・・あ、あの男?いや、だってあのときの男、おれとおなじくらいじゃないのか?」
「そうだな。もうそれぐらいかもしれない。テリーが《薬》を減らしたせいだ」
ロビーがえんりょがちに手をあげ、「『元気なった』って意味と、『若い』は、厳密にいうとべつの意味ですよ」と礼儀正しくタタに教えてやるが、わらって首をふられた。