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掟はやぶられた
「 だって、テリーが無理だって言ってたじゃん。 会ったらおれたちにも《呪い》がかかるし」
「そのために、《差し入れの煙草》も吸ったじゃねえか」
いいあう若い警備官たちを楽しそうにながめたスーフ族は、煙草の煙をもらしながら、テリー、とまた呼んだ。
「 ―― 『狼男』をここに連れてこい。パレレ族もダゲッドム族も、おれたちスーフ族を騙そうとした。『掟』は破られた。 もう、彼をとじこめておく必要はなくなった」
「エボフ、でも、」
座りこんだまま、ここにきてもしり込みしそうな、最後のダゲッドム族の男の前にルイがたち、手をさしだした。
「友達をとるか、母親をとるかで迷ってるなら、よく考えた方がいい。 この選択で。きみのこれから先の人生もかわるんだから」
「・・・・・・」
手をつかんでゆっくりと立ち上がったテリーは、みんなにうなずいてみせてから、背をむけた。