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一方的な恨み
にらまれたタタは目をそらすように首をふった。
「無理だ。 エボフ、おれはもう最後のパレレ族だけど、民族同士の『掟』で残ってるのも、あの『狼男』についてのことが最後だ。ダゲッドム族もテリーが最後になって、彼もいろいろ悩んでる。もう、あの『掟』は今後通用しない。そろそろ決着をつけるべきなんだ」
「『決着』だと?なにの『決着』だ? いいか、《ダゲッドム族》と《狼男》のあいだにあるのは、一方的な恨みだけだ。《狼男》はそれをうけいれた。 おれたちスーフ族がそれを許したのは、《狼男》に説得されたからだ、それを忘れたのか? おい、テリー、《狼男》はどうしてるんだ?ダゲッドム族だけでなにかはじめてるのか?」
ちがう!とテリーはまだ顔に両手をあてたまま、はげしく首をふった。
「おれはっ、おれは、サミーの味方をしたいんだ!サミーはおれを応援してくれる!おれの苦しみをへらそうとしてくれるんだ!・・・だけど、かあさんは、サミーのことが嫌いで・・・」